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私の男

2013年製作/129分/R15+/日本

10歳で孤児となった少女・花は、遠縁の男・淳悟に引き取られる。共に孤独を抱える二人は北海道・紋別の田舎町で寄り添うように生きていたが、6年後、オホーツク海の流氷の上で殺人事件が発生。

それを機に花と淳悟は逃げるように町を出て、東京へと向かう。

予告動画

映画『私の男』予告編

キャスト・スタッフ

出演 (腐野淳悟)浅野忠信
(腐野花)二階堂ふみ
(田岡)モロ師岡
(大塩小町)河井青葉
(花(10歳))山田望叶
(美郎の先輩)三浦誠己
(大輔)三浦貴大
(タクシー会社の事務員)広岡由里子
(小町の先輩)安藤玉恵
(花の父親)竹原ピストル
監督 熊切和嘉
原作 桜庭一樹
音楽 ジム・オルーク
脚本 宇治田隆史
制作 藤岡修
由里敬三
分部至郎
木村良輔
宮本直人

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「私の男」のDVD・Blu-rayは、2015年2月3日に販売されています。

「私の男」は、DVD・Blu-rayを購入もしくはレンタルすることでも視聴できますが、動画配信サービスを利用することで今すぐ無料で視聴できます。

作品概要

「私の男」は2014年の6月14日に劇場公開されている、熊切和嘉監督によるラブストーリーです。夭折の小説家・佐藤泰志の連作短編集の映像化にチャレンジした「海炭市叙景」から瀬戸内晴美の代表作をもとにした「夏の終り」まで。文芸作品の実写化には定評があり、国内外を問わずに高い評価を集めている実力派の映画作家がメガホンを取りました。2014年度のキネマ旬報年間ベストテンでは邦画部門の第5位にランクインしていて、カメラマンの近藤龍人が撮影賞に輝いています。もとになっているのは2007年の10月30日に文藝春秋から刊行されている、桜庭一樹の第138回直木賞受賞作です。本作品で主演を務めた浅野忠信が、モスクワ国際映画祭のコンペティション部門において最優秀男優賞を獲得しました。

あらすじ

北海道南西沖の小さな島に住んでいた竹中花が、地震による津波によって両親と兄と妹を奪われたのは小学4年生の時です。紋別市に在住する遠縁の腐野淳悟という年若い男性が、養子縁組みの手続きを済ませた後に花を引き取ってくれます。ルックスに恵まれていた淳悟は異性関係が派手ででしたが、その中でも特に深い仲になっていたのが大塩小町という女性でした。小町は淳悟が花と暮らし始めて以来、以前のようにふたりっきりで会える機会が少なくなったため面白くありません。更には義理の親子であるはずの淳悟と花の間に、好ましくない関係があることを察知します。小町の親戚であり本家の有力者である大塩がふたりを引き離そうとしたために、思わぬ悲劇が巻き起こるのでした。

見どころ

雪景色の白に映える豪華な役者たち

主人公・腐野淳悟の破滅的ながらも何処かピュアな生きざまを、浅野忠信が迫真の演技力によって体現していました。過酷な生い立ちと決して打ち明けることの出来ない秘密を抱くヒロインの花には、二階堂ふみのイメージがぴったりとハマっています。撮影当時はまだ10代だったという逸話は、スクリーンの中からでも感じる妖艶さからは到底信じることができません。移ろいやすいふたりの関係性を大きく左右する人物が、ベテラン俳優の藤竜也が威圧感たっぷりと扮している大塩です。花の本当の父親としてカメオ出演を果たしている竹原ピストルも、熊切組の常連として確かな存在感を発揮していました。花の婚約者である大輔役の三浦貴大など一瞬しか出番のない出演者も実に豪華なメンバーが顔を揃えています。

3つのカメラから映し出されていく北の大地の雄大さと儚さ

序盤の避難所での回想シーンは臨場感を追及するために敢えて16ミリフィルム、中盤以降に紋別に舞台を移してからは今ではすっかり珍しくなった35ミリフィルム、後半パートの東京では最新技術を駆使したデジタルシネマ。3種類の写真フィルムを、時系列に使い分けた映像が味わい深かったです。物語のキーワードとなる殺人事件が起こる場所、流氷と極寒に包まれたオホーツク海の厳しい自然の風景には圧倒されるでしょう。港町としても有名な紋別市内には外国船や海外からのお客さんも多数出入りしていて、異国情緒がたっぷりです。天然温泉や遊覧船乗り場などの観光スポットがひしめき合う、ウトロの賑わいも楽しげに映し出されていました。淳悟と花がふたりっきりで暮らしている、海沿いの町外れにポツンと佇む公務員用宿舎の寄る辺の無さも胸に焼き付きます。

映像でも文章でも楽しめる作品

原作では現在から過去へと時間の流れを遡っていく独特なスタイルをとっていましたが、映画では花の成長していく過程を捉えています。殺人事件の中で重要なキーアイテムがカメラからメガネに変更されているなど、微妙な違いも幾つかありました。 花の会社の同僚・尾崎美郎が映画版ではいまいち影が薄いのに対して、オリジナルキャラクターである大輔が美味しいところを持っていってしまう点も見逃せません。小説と映画の両方を見比べてみると、より一層作品の奥深い世界観を味わうことが出来るはずです。

考察・ネタバレ

被災地での運命的な出逢い

オープニングの舞台となる避難所の学校を、泥だらけのパジャマ姿に裸足でさ迷い歩く僅か10歳の女の子の後ろ姿が痛切です。ペットボトルの水を抱きかかえたままで体育館にたどり着いた花が、若き日の淳悟と巡り合う場面が鮮烈でした。停電中の廊下に並べられたロウソクの明かりの中で淳悟が呟いた、「もう俺のもんだぞ」という淳悟のセリフが何とも意味深です。淳悟に引き取られて育てられることになった花は、成長するにつれて不思議な魅力を放っていきます。

いつもの朝が赤く染まる時

大塩小町という美しく聡明な大人の女性とのお付き合いを続けながらも、義理の娘である花と許されざる関係を続けてしまう淳悟の胸の内は理解できません。いつもと同じ朝の何気ない食卓で、淳悟と花が一線を越えるきっかけが印象深かったです。トースターから小麦色に焼けた食パンに花はイチゴジャムを塗っていますが、いつの間にやら背後に立っている淳悟の存在には気がつきません。青ざめたような光に包まれた部屋の中でやたらと鮮やかなジャムの赤い色からは、不吉なムードがじわりじわりと高まっていきます。やがては部屋中が真っ赤な血の雨に包まれていく、ふたりの現実と妄想が激しく重なり合う瞬間には驚かされました。この時に偶然にも家の外にいて一部始終を目撃してしまった大塩によって、物語は更なる破局へと進んでいきます。

血の繋がりの素晴らしさと恐ろしさ

戸籍の上では義理の親子である淳悟と花が、本当の血縁関係があったことが明かされていく後半の展開には息を呑みました。血の繋がりに頼ることのない新しい家族の素晴らしさを世界各国の映画監督が描いている今、敢えて疑似家族の危うさをテーマにしていて挑発的です。逃げるように東京に移り住んだ後に、淳悟は仕事を転々として遂には無職の状態になってしまいます。どしゃ降りの雨の中をおんぼろの傘を差しながら、借り物の背広とサンダル履きでとぼとぼと歩く淳悟にはかつての精悍さはありません。それとは対照的に都内の学校を卒業して大手の商社に就職を決めた花は、プライベートでも恋人ができて見違えるように垢抜けていました。北海道ではメガネをかけていた花が、新しい土地ではコンタクトレンズを使用しているところにも注目して下さい。

まとめ

変わり果てた淳悟と美しく成長を遂げた花が、3年ぶりの再会を果たす場面で物語は謎を残しつつ幕を閉じていきます。高級レストランに淳悟と花、加えて花の婚約者・大輔の3人が対面するクライマックスの食事のシーンが圧巻です。一見すると和やかなムードの中で料理を楽しんでいるようにも思えますが、テーブルクロスの下の不穏な動きを見逃さないで下さい。果たして花は淳悟からの束縛を断ち切って大輔と真っ当な夫婦に成れるのか、それとも父と娘の異様な関係は続いていくのか。全ての答えはこの映画を見た観客自身に委ねられていて、登場人物たちの運命はそれぞれが自由に思いを巡らせるしかありません。「青春☆金属バッド」や「ノン子36歳(家事手伝い)」に代表されるような、初期の熊切監督の作品に慣れ親しんだ方は是非みて下さい。

本ページの情報は2020年7月時点のものです。
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