生まれてすぐ父親の愛人に誘拐され、4歳まで育てられた恵理菜。両親のもとに戻るも、世間からいわれのない中傷を受け、自分の家族に実感を持てずにいた彼女は、誰にも心を開かないまま成長。そして、妻子ある男を好きになり、彼の子供を身ごもってしまう…。出典: U-NEXT
ライター/ジョセフ
解説/鯉西編集部
#01八日目の蝉フル動画無料視聴方法
「八日目の蝉」はU-NEXTの無料期間を利用して0円で視聴することができます。
U-NEXTは31日間のお試し期間が設定されており、期間内に解約すれば料金が発生しません。
#02八日目の蝉作品情報
「八日目の蝉」は2011年の4月29日に劇場公開されている、成島出監督によるヒューマンドラマになります。
角田光代によって中広文庫から刊行されてベストセラーとなった、長編ミステリーがもとをもとにして映像化されました。
宮部みゆきの小説を実写化した「ソロモンの偽証」から、喫茶店の女主人とお客さんとの交流をテーマにした「ふしぎな岬の物語」まで。
サスペンスから人情話までを幅広く手掛けている、実力派の映画作家がメガホンを取っています。
誘拐事件を起こした女と、彼女を母親だと信じていた少女の21年にも渡る愛憎劇の顛末に迫っていきます。
脚本を担当したのはテレビドラマ「夜行観覧車」やアニメ「おおかみこどもの雨と雪」などのヒット作に恵まれた奥寺佐渡子です。
2011年度のキネマ旬報では日本映画部門で年間第5位にランクインしていて、永作博美が主演女優賞・小池栄子が助演女優賞を獲得しました。
作品データ
上映時間 | 147分 |
製作年 | 2011年 |
製作国 | 日本 |
原題 | - |
配給 | 松竹 |
公式サイト | - |
#03八日目の蝉予告動画・あらすじ
予告動画
あらすじ
野々宮希和子は妻子ある男性・秋山丈博との不適切な関係を続けた末に、彼の赤ちゃんを身籠ってしまいました。
自らが母親と成れないことを悟った希和子は、衝動的に丈博と妻・恵津子との間に産まれた生後4カ月の恵理菜を連れ去ってしまいます。
恵理菜に仮の名前「薫」を与えて逃亡を続けていた希和子が、とうとう逮捕されたのは事件発生から4年余り経った時です。
恵理菜は本当の父親と母親のもとへ連れ戻されますが、彼らと親子の関係を築き上げていくことがなかなか出来ません。
大学生へ進学したのは機に親元を離れてひとり静かに暮らしていた恵理菜に接触してきたのは、ルポライターを名乗る安藤千草です。
彼女との出会いがきっかけになって、恵理菜は希和子と歩いた道を辿りつつ閉ざしていた過去の記憶とも向き合っていくのでした。
#04八日目の蝉主題歌・挿入歌
主題歌
挿入歌
#05八日目の蝉キャスト・スタッフ
#06八日目の蝉見どころ
世代を越えたふたりの名女優の共演
複雑な過去を引きずったままで心を閉ざしている、異色な主人公の秋山恵理菜を演じているのは井上真央です。
「花より男子」や「僕の初恋をキミに捧ぐ」で披露した華やかなイメージを封印した、仏頂面も似合っていました。
乳飲み子を抱えたままで決死の逃避行を続けていく、影のヒロイン・野々宮希和子役を務めているのは永作博美です。
犯罪者でありながら血の繋がりのない恵理菜に惜しみ無く注ぐひた向きな愛情と、強く意志を秘めた眼差しには圧倒されるでしょう。
美しく何事にも屈しない女性たちと比べてみると、男性キャラクターたちはいまいち頼りなく存在感がありません。
恵理菜から「やっかい事から逃げる」と評されるが岸田孝史役の劇団ひとりや、全ての元凶にも思える秋山丈博に扮した田中哲司がいい味を出しています。
思い出の場所と時間と記憶を巡る旅のアルバム
オープニングは大学生へと成長を遂げた秋山恵理菜が独り暮らしを送っている、年季が入った木造アパートの一室です。
アパートから外に出た恵理菜が自転車に股がって坂道を駆け降りていくうちに、時間の流れを遡る旅へと導かれていきました。
恵理菜の実家があるのは神奈川県平塚市で物理的には都内から近いはずですが、心の奥底では距離感があるようで長らく足が遠のいています。
今ではすっかり見かけられなくなった破風付き屋根が連なる住宅街で、はるか後方を最新型の新幹線が駆け抜けていくミスマッチが忘れ難いです。
前半から中盤にかけての閉塞感の漂う街並みを数多く見せられただけあって、後半の舞台となる香川県小豆島の解放感は堪りません。
フェリーの上から見渡す瀬戸内海の雄大さと、豊かな自然に囲まれている島の風景の美しさを存分に味わってください。
哀しい物語に鳴り響く癒しのメロディー
主題歌を歌っているのは中島美嘉で映画公開当時は音楽活動を休止してあましたが、原作に惚れ込んで特別に書き下ろした曲です。
テレビや新聞に掲載された手配写真を誤魔化すために、希和子が自らの髪をハサミで切り落とすシーンがあります。
そこで挿入歌として流れるのがジョン・メイヤーの「ドーターズ」で、何とも哀愁たっぷりとしたメロディーでした。
眠れない夜に恵理菜が枕元で希和子から繰り返し歌ってもらったという、「お星さまの歌」も何とも気になります。
原曲のフランス民謡を日本向けにアレンジした「きらきら星」でもなく、「空にキラキラお星様」の歌い出しでお馴染みの「おもちゃのチャチャチャ」でもない。
ヒントは映画の中で随所にさりげなく散りばめられていますので、その予想外のタイトルを推理してみて下さい。
#07八日目の蝉感想・評価
ストイックで孤高な女子大学生
昼間は物流センターで重い荷物を延々と運び続けて、夜は居酒屋でホールでの接客から洗い物までをこなして。
せっかくの夏休みだというのに朝早くから夜遅くまでアルバイトに明け暮れる、恵理菜の横顔がストイックでした。
バイト先にまで押し掛けて生活費の入った封筒を押し付けてくる父・丈博に対しても、大人の対応で切り返してしまうのが格好いいです。
学校でもこれといって仲の良い友達も居ないようで、今時の女子大生らしいキャンパスライフは微塵も感じられません。
そんな恵理菜にしつこく付きまとってくる、謎めいた女性・安藤千草の出現によって物語は動き始めていきます。
冬眠状態から目覚める恵理菜
ルポライターとは名ばかりで親が所有するマンションで何不自由ない毎日を送る千草でしたが、何処か物足りなさを抱いているのでしょう。
不思議と波長が合ったふたりが、夜遅くまで飲み明かしたり朝食を一緒に作って食べる場面には心温まるものがありました。
「仲間たちがみんな死んだ後もただ1匹生き残った八日目の蝉」という、夜の公園で恵理菜が千草に向かって呟くセリフも心に残ります。
土の中で眠ったように生きてきた恵理菜が、初めて自分自身の過去と向き合っていく瞬間を鮮やかに捉えている言葉です。
千草のと自分との意外な縁を知った恵理菜は、両親にも交際相手の岸田にも言えない秘密を彼女に打ち明けます。
運命の輪から抜け出すために
自らが憎んでいたはずの希和子と全く同じように、岸田との不倫の道のりを歩んでいく恵理菜の運命が皮肉です。
岸田が既婚男性てあること、口先では調子のいい言葉を並べたてながらも恵理菜が妊娠した途端に態度を翻してしまうこと。
かつての希和子と丈博の関係が、そっくりそのまま恵理菜と岸田に受け継がれていることに運命の残酷さを感じました。
悲劇の連鎖を自分たちの手で断ち切るために、恵理菜と千草は岡山県へと向かいフェリーに乗って小豆島へ渡ります。
やたらとお土産物や写真撮影にこだわる千草と、旅の思い出にはまるで執着しない千草とのコントラストも印象深かったです。
みんなの感想・評価
「八日目の蝉」
— Eva (@cnntnst) May 2, 2020
誘拐犯を母と慕った女性の追憶。
どの立場であれ誰かの親になりたいなんて究極のエゴだが、そのエゴを前にして涙が止まらないから人生は矛盾。助けて。
「他の蝉より長生きした”八日目の蝉”は孤独だが、他の蝉が知らぬ景色を見る」特殊な道を歩まされた全ての人への鼓舞だと捉えたい。 pic.twitter.com/rJihs4BK1V
#八日目の蝉
— chan (@Buona__giornata) March 31, 2020
誘拐犯と誘拐された少女、その母親、それぞれが抱える境遇に胸が締め付けられる。かつて母と慕った女性との逃亡劇を辿る旅。八日目の蝉にしか見えない景色、分からない淋しさ。沁み入る主題歌。胸を揺さぶる演技。号泣。#井上真央#永作博美#小池栄子 pic.twitter.com/lYPtRt1qDw
(映画)八日目の蝉(2011)
— kotorisuki (@musicpaperback) December 10, 2019
細部までていねいに作り込まれていて、演出、脚本、撮影、音楽、配役、皆すばらしい。
原作と異なり、誘拐・逃亡生活と20年後の薫とを並列に映像化することで、テーマの重さが一層際立っていると思います。
小豆島の夏祭り、松明行列のシーンが心に刻まれました。 pic.twitter.com/TeeLfDJvJY
#08八日目の蝉まとめ
クライマックスの舞台となるのは21年前の逃走劇が終わりを告げた場所でもある、小豆島のフェリー乗り場です。
誘拐犯人との間に芽生えていた疑似家族としての愛情が、実の母と娘を越えているほと深いことに驚かされます。
自らの身体の中に授かった生命を、たったひとりで育て上げていく恵理菜の決意には強く心を揺さぶられました。
美貌の横領犯をヒロインに迎えた吉田大八監督「紙の月」から、家族の崩壊と再生を描く豊田利晃監督の「空中庭園」まで。
角田光代の小説の熱心な愛読者や、映像化作品がお気に入りな皆さんは是非ともこの1本をご覧になってください。