歌う夢を胸に秘め、テレビリポーターを務める葉子は巨大な湖にひそむ“幻の怪魚”を探すため、番組クルーと共にかつてシルクロードの中心地として栄えた地を訪れた。ある日の撮影が終わり、ひとり街に出た彼女は、聞こえてきたかすかな歌声に誘われ…。出典: U-NEXT
ライター/ジョセフ
解説/鯉西編集部
#01旅のおわり世界のはじまりフル動画無料視聴方法
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#02旅のおわり世界のはじまり作品情報
「旅のおわり世界のはじまり」は黒沢清監督によって、2019年の6月14日に劇場公開されているロードムービーです。
とある一家の崩壊を淡々と綴った「トウキョウソナタ」から、ご町内に潜む狂気を暴き出していく「クリーピー 偽りの隣人」まで。
映画批評家や小説家としても活動を続けている、1955年生まれで神戸市出身の映画作家がメガホンを取りました。
日本とウズベキスタンとの国交樹立25周年を記念した両国合作で、1カ月におよぶオール海外ロケで制作されています。
テレビの旅番組の女性リポーターが、小編成の撮影クルーと共にウズベキスタンへと繰り出していくドキュメンタリータッチの作品です。
作品データ
上映時間 | 120分 |
製作年 | 2019年 |
製作国 | 日本 ウズベキスタン カタール |
原題 | - |
配給 | 東京テアトル |
公式サイト | 映画『旅のおわり世界のはじまり』公式サイト |
#03旅のおわり世界のはじまり予告動画・あらすじ
予告動画
あらすじ
藤田葉子はテレビ番組の旅コーナーでリポーター役として出演して、そこそこに知名度と人気があるタレントです。
今回の番組企画は中央アジアのウズベキスタンで、アイダール湖に棲息する怪魚をカメラに収めることでした。
葉子と同じ飛行機で来たのはディレクターの吉岡とカメラマン・岩尾のふたりで、ADの佐々木は先発隊として既に現地入りしています。
少人数のスタッフだけで撮影は始まりますが、突如として撮影許可が取り消されたり金銭的なトラブルに見舞われたりと予定通りには進みません。
根っからの視聴率至上主義の吉岡と、もともとはドキュメンタリーカメラマン志望だった岩尾はお互いへの嫌悪感を露にします。
通じない言葉と慣れない風習に戸惑いっぱなしの葉子は、異文化に触れていくことで少しずつ自分自身を見つめ直していくのでした。
#04旅のおわり世界のはじまりキャスト・スタッフ
#05旅のおわり世界のはじまり見どころ
旅立ちを迎えるヒロインにぴったり
人生の中で迷子になってしまったかのようにぼんやり立ち尽くすヒロイン、藤田葉子を演じているのは前田敦子です。
国民的なアイドルグループのセンターとして走り続けてきた10代と、女優としてキャリアを積んできた20代の彼女の生きざまそのままですね。
見切り発車のままで現地ロケを敢行していく迷惑ディレクター、吉岡役の染谷将太もいい味を出していました。
このふたりは廣木隆一監督の2015年作、「さよなら歌舞伎町」では倦怠期に突入したカップル役で共演しています。
今作でも息の合った掛け合いと憎まれ口の叩き合いを軽やかにこなしていて、凸凹コンビとしての魅力は健在です。
本国のウズベキスタンに止まることなく海外でも幅広く支持を集めている、アディズ・ラジャボフが現地通訳のテルムに扮していました。
劇中では流暢な日本語を披露していて、その順応性の豊かさと役者としてのプロ意識の高さには頭が下がります。
遠くて近い国
ウズベキスタンという国名を聞いた瞬間に、多くの人が「旧ソ連」といったキーワードを連想するのではないでしょうか。
熱心な邦画ファンであれば飯田譲治監督の2003年作、「ドラゴンヘッド」のロケ地として思い浮かべてしまうはずです。
シャヴカト・ミルズィヤエフ大統領の名前や、首都タシュケントの位置までパッと出てくる人はごくごく僅かでしょう。
日本からは物理的には距離感が横たわっている国ですが、意外なほど官民問わずに地道で友好的な国際交流を続けてきました。
その背景には第2次世界大戦終結直後にシベリアに抑留されていた日本人が、ウズベキスタンへと強制連行されたほろ苦い歴史があります。
その当時抑留されていた日本人の手によって建設されたナヴォイ劇場が、完成から70年を迎えたことが本作の誕生きっかけのひとつです。
遠く離れた海の向こうのアジアの小国と、我が国との不思議な繋がりに思いを巡らせながら鑑賞してみて下さい。
美しい風景の中に歴史の過ち
旅のスタート地点となるのは、ウズベキスタン南部に位置するイスラム教文化が根付いた都市・サマルカンドです。
旧くはアレクサンダー3世が率いたマケドニア軍、中世ではモンゴルやイラン、20世紀に入ると冷戦時代のソ連。
過去には異教徒や諸外国からの侵略に悩まされ続けてきた傷跡が、町外れの慰霊碑や古戦場にも刻まれていました。
葉子たちがお目当ての幻の魚を探すために訪れるのは、カザフスタンとの国境にまたがって雄大に広がるアイダール湖です。
もともとこの一帯は乾上がった大地だったのが、1大規模なダム建設によって流れ込んできた川が湖を形成したという数奇な歴史があります。
風光明媚な眺めや歴史ある建造物の中にも、争いを繰り返し自然の流れをねじ曲げてきた人間の浅ましさが見え隠れしていました。
#06旅のおわり世界のはじまり感想・評価
ウズベキスタンには着いたけれど
滞在中の異国のホテル内を不安げな眼差しを浮かべながら、うろちょろとする藤田葉子がオープニングを飾ります。
朝早くに客室で目覚めた時に、一瞬自分がどこにいるのか分からなくなってしまうあの奇妙な感覚が伝わってきました。
日本から遠路はるばるやって来た目的が、伝説的の珍魚を発見するという視聴率狙いだけでは葉子のモチベーションが上がってこないのも当然です。
休憩中に地元の食堂で食べている御当地グルメのプロフも、ロケハン不足からかそれほど美味しそうではありません。
道中には物珍しげな屋台や目を見張るような伝統工芸品もたくさん並んでいますが、スマホを片時も離さずにLINE返信にばかり気を取られている葉子が印象的でした。
自由になれないヤギと葉子
撮影が休憩時間に入った時にぶらりと立ち寄った住宅街で葉子が偶然に見つけた、1匹のヤギ・オクーが可愛らしかったです。
大きな木の杭に繋がれて人間たちに飼い慣らされていたヤギが、草原へと帰っていくシーンが解放感に満ちあふれていました。
あくまでもテレビ放映用の演出なために、ディレクターの吉岡が現地の人にお金を払って演出したという裏話も明かされます。
番組撮影が無事に終了すれば葉子たちは日本へとんぼ返り、オクーは再び飼い主の元に返還されて囲いの中へ。
人間であろうとヤギであろうと定められた運命からはそう簡単には抜け出すことが出来ないという、残酷な現実を突き付けられてしまいました。
夢か現実か不思議なステージ
いつの間にか見知らぬ街をさ迷い歩いている葉子の側には、大きなカメラを抱えた岩尾も何かにつけて文句ばかりの吉岡もいません。
何処からともなく聞こえてきた歌声に誘われるかのように、劇場の中へとふらふらと入っていく葉子の後ろ姿が儚げです。
がらがらの客席にひとりで腰かけた葉子の目の前で繰り広げられていく、つかの間の歌謡ショーも幻想的でした。
ステージ上に飛び入り参加した葉子が熱唱する「愛の讃歌」は、本家のエディット・ピアフにも負けないような華があります。
パトロール中の警備員の野暮なひと言によって全ては水の泡となり、夢のような時間の終わりが何とも名残惜しかったです。
みんなの感想・評価
旅のおわり世界のはじまり
— 夜猫 (@neco_yoru) April 26, 2020
海外の旅番組制作の裏側をドキュメンタリータッチで描いた作品。何でかな?ずっと見てられる。妙にリアルで、著名な役者を揃えているにも関わらず、皆本物のスタッフにしか見えない。感情を煽るような演出が殆どないのが、新鮮でもある。何か良かった。そんな作品です。 pic.twitter.com/wOLSm5JnTW
『旅のおわり世界のはじまり』
— Hidezou (@hidezou777) June 18, 2019
ドキュメンタリーと見間違うような、役の中でオンオフ感を表現する巧みさ。
言葉も通じない異国の“旅”で迷子になる不安と恐怖。
そして、ウズベキスタンの山々を背景に力強く「愛の賛歌」を歌う、“世界のはじまり”での圧倒的な存在感。
とにかく前田敦子。そんな作品。 pic.twitter.com/2qtCnF0mDK
はあ、すごい映画見た…知らない誰かになったみたいだった、こんなことってあるんだな。たまに自分の気持ちが分からなくなる人に見て欲しい、ってそんなの人類みんなでしょ。とも思うんだけど。
— 戸田真琴staff (@toda_makoto) June 17, 2019
まこりんカフェ上のユーロスペースにて。見てよかったあ。『旅のおわり 世界のはじまり』って映画です。 pic.twitter.com/iUHH0uvvEq
『旅のおわり世界のはじまり』前田敦子が素晴らしすぎて、今年は邦画で彼女以上に心に残る女優は出てくるだろうかと思う程。耳にかける髪、包まれる様な風を受ける細い四肢、不安そうな佇み方も、素に戻って山羊を撫ぜるしゃがみ方も、何でもない仕草にどんどん魅きつけられていった。彼女への賛歌だ。 pic.twitter.com/6kwUC706lo
— ろろ・そぜ (@rorosoze) June 19, 2019
黒沢清『旅のおわり世界のはじまり』異郷の地ウズベキスタン、バラエティ番組撮影で訪れたTVクルー。難航する収録、一向に現れない幻の怪魚、火の通っていない名物料理…。レポーター女性の彷徨い追われ自己を見つめる魂の目覚め。遊園地の過酷な遊具に笑い、ヤギにほろり、幻想的劇場シーン、愛の賛歌 pic.twitter.com/ZTsAWuby5e
— 魔の山 (@manoyama12) August 24, 2020
#07旅のおわり世界のはじまりまとめ
日常とはかけ離れた大自然の中に飛び込んでいき、数多くの貴重な体験をしてきた葉子は冒頭とは別人のように生き生きとしています。
終着点となるこの世の果てのような丘の上で目の当たりにした光景と、ここでも彼女を勇気づける「愛の讃歌」のメロディーが圧巻でした。
何となくリポーターの仕事を続けていた葉子が、心の底からやりたかったことに気がつくラストも清々しかったです。
代わり映えのしない毎日に物足りなさを抱いている方や、海外旅行にはご無沙汰な皆さんは是非ご覧になって下さい。