昭和63年、暴力団対策法成立直前の広島。所轄署に配属となった日岡秀一は、暴力団との癒着を噂される刑事・大上章吾と共に、金融会社社員失踪事件の捜査を担当。常軌を逸した大上の捜査に戸惑う日岡。失踪事件を発端に、対立する暴力団同士の抗争が激化し…。出典: U-NEXT
ライター/東一葉
解説/鯉西編集部
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#02孤狼の血作品情報
「孤狼の血」は、バイオレンスムービー、そんな一言では片付けられない。
見たか、アウトレイジ!と言わんばかりの東映の意地を感じる映画だ。
柚月裕子原作の小説にメガホンをとったのは「凶悪」や「彼女がその名を知らない鳥たち」で隙きのない作品を魅せてくれている白石和彌監督。
そして、私が「なんでも屋」と呼んでいる日本を代表する役者、役所広司が主演を務める。
助演をやってのけたのが私が「優等生俳優」と密かに呼んでいる松坂桃李。
申し分ない監督と役者たちが作り上げたのが、本作だ。
作品データ
上映時間 | 126分 |
製作年 | 2018年 |
製作国 | 日本 |
原題 | - |
配給 | 東映 |
公式サイト | 映画『孤狼の血』公式サイト |
受賞歴
第42回 日本アカデミー賞 2019年 | |
受賞 | 最優秀主演男優賞 最優秀助演男優賞 |
ノミネート | 最優秀作品賞 最優秀監督賞 最優秀脚本賞 最優秀助演女優賞 |
#03孤狼の血予告動画・あらすじ
予告動画
あらすじ
ヤクザが溢れかえっていた昭和63年の広島県呉原。
暴力団対策法成立前の時代、ヤクザたちを押さえつけるものは何もなかった。
一触即発の状態でいがみ合う加古村組と尾谷組の抗争の最中、加古村組の息のかかった金融会社の社員が失踪する。
この失踪を殺人事件と睨んだのは暴力団との癒着が噂される暴力団対策班の巡査部長である大上(役所広司)だった。
大上の下で捜査にあたることとなった巡査、日岡(松坂桃李)は大上の無謀で歯茶目茶な行動に疑問を持つが、いつの日か大上の目指す正義に気づき始める。
大上の正義に気づいていくのに比例するかのように覚醒していく日岡。
2人の目指す正義は実現されるのか。
そして、彼らが守りたかった者たちは無事でいられるのか。
#04孤狼の血キャスト・スタッフ
#05孤狼の血見どころ
役所広司
この役者の可能性はどこまであるのか。
初めてこの俳優を認識したのは「Shall we ダンス?」だった。
冴えないサラリーマンが社交ダンスを通じて輝くさまを演じた。
その後「金融腐蝕列島」という経済映画で金融業界のミドル層を骨太に演じ、幅の広さを見せつけた。
その他にも神経質な作家、無骨な木こりだったり。
そして今作のヤクザ顔負けの怒号を飛ばす刑事だ。
ある意味、この役者は無味無臭なのかもしれない。
主演を張る映画俳優というと、固定されたキャラクターを限りなくそのキャラクターに近い役どころで演じるイメージがあるが、役所広司は違う。
何にでもなるし、どんな香りをも放つ。
役所広司が「孤狼の血」で演じた大上が放ったのは、崩れたスーツ姿に脂ぎった顔、汚れた言葉の数々、男臭さの極みのような香りというよりは匂いだ。
あまりの残酷さに大上がただの悪人にしか見えなくなりそうになる。
しかし、そんなわけがないとどこかに期待も持たせるところが役所広司の凄さだ。
暴力と暴言のオンパレードなのに、何か大上に課せられた使命があるのだと感じさせる。
周到な罠にかけられたのは私だけだろうか。
豪華な脇役
主演の役所広司を食うのではなく、きちんと引き立てる脇役たちを務めたのは主役級の役者たちだ。
尾谷組の若頭を江口洋介、構成員を中村倫也、敵対する加古村組の構成員が竹野内豊、音尾琢真。
広島県警の刑事役が松坂桃李と田口トモロヲ。
冷徹な江口洋介も、残虐な竹野内豊も、薬物中毒の中村倫也も、脂ぎった松坂桃李も観たくなかった、なんていうのがもったいない位に全員の熱量が素晴らしい。
この映画がただの任侠映画でもバイオレンス映画でもない理由はこの脇役たちの存在にあるのは間違いない。
松坂桃李が大上のバディである日岡を演じたが、日岡が唯一全うな目線を持った代弁者のような役割を果たす。
しかし、徐々に大上が乗り移ったかのように暴力と暴言の世界に染まっていく。
その元々持っていた強い正義感が大上が追い求めて保ってきた真の正義感に変化していくさまは映画の重要な要素となっている。
あくまで映画の中の暴力として、暴力的な男臭さを楽しんでほしい。
広島弁
広島県の呉原市という架空の地方都市となっているが、ロケ地はほぼ呉市だという。
昭和にタイムスリップしたかのように、現代に撮影したと思えない町並がある。
そこに全員が話す広島弁が任侠っぷりを最大限表現している。
脅したり威嚇するのにこんなにも有効な言葉があったのかと感心だ。
男たちの広島弁も良かったが、真木よう子演じるクラブのママの艶っぽさに加わる広島弁も、良かった。
強い信頼関係で大上とつながった雰囲気が色っぽい。
暴力シーンが多い作品だけに任侠ものを敬遠しがちな女性でも見やすくなっている。
#06孤狼の血感想・評価
守りたいもの
大上が守りたかったもの、それが「堅気」たちの暮らしだということが分かってからは、なんだか楽に見る事ができた。
ただの暴力刑事の癒着といじめの映画だったら、こんなにもエンターテイメント性のある作品にはなっていない。
それが肯定されるものでもないが、「奴らを生かさず殺さず飼い殺しにしていくんがワシらの仕事じゃろうが!」と日岡に真意を語る頃にはうすうす気がついてはいるのだが、安心する言葉だった。
時代は昭和の終わりだ。
暴力団対策法が施行される前、取締りだけでは終わりの見えない暴力団への対応を汚れる事を躊躇せずに一手に引き受ける一人の刑事の信念に感服するのだ。
加古村組と尾谷組の全面戦争を阻止する目的、それは一般市民を守ることにほかならない。
しかし、加古村は地場の尾谷を潰したいがために挑発を繰り返し、尾谷組の構成員が加古村の若手に、手をかけてしまう。
違法捜査が問題になり、捜査から外された大上が1人組に乗り込み抗争を思い留めるよう説得するも、両者の主張は相容れない。
そんな中、大上は姿を消す。
一般市民の安全を命を懸けて守ろうとした大上の正義は、日岡によって受け継がれる。
ヤクザ刑事である大上はダークヒーローとして実に格好良く描かれている。
暴力シーン
暴力団の敵対する組の構成員たちへの拷問シーンが冒頭から始まる。
目を塞ぎたくなるようなバイオレンスの連続にも関わらず、最後まで駆け抜けるように映画が終わってしまう。
これがなぜなのか。
暴力シーンに対する振り切り方が半端ではないからだ。
こういったシーンを半端にしてしまうとおそらくこの映画は失敗作と言われる映画になっていただろう。
切って、刺して、えぐって、打って、埋めて、この世の中に存在する暴力のすべてが描かれている。
暴力行為そのものだけでなく、血や腫れ上がった顔面など、とにかくリアリティに惨事が表現されているのが今の時代珍しい。
地上波での放送ははなから想定していない、「映画館でどうぞ」と言っている感じがなおのこと格好良い。
コンプライアンス無視の捜査にコンプライアンス無視の映像は映画というものの原点回帰のように思えて仕方ない。
若者たちへのメッセージ
なぜ暴力映画を撮るのか、そのことの答えを見せつけられた。
人間の暴力的な面を極端に描くことで、人間の本性や必死に生きる姿を描く。
そのためにバイオレンスが必要であり、これを生半可に描くのは人間の本質をぼやかし必死さの信憑性が失われる。
とことん生きる意味を男たちが生きる形相を魅せてくれた。
現代にこの映画が作られたのは、愛よりもコンプラ、優しい事よりも正しい事を選ばざる得ない今の若者たちへのメッセージなのだろうと思う。
守るべき最たるものは身近な者たちなのかもしれないが、もっと大きなものを守るとはどんな事なのかを知った上で身近な者を守るのと知らないまま守るのとでは雲泥の差だ。
みんなの感想・評価
#孤狼の血
— 天の狗 (@liquidrunner13) December 9, 2020
「アウトかレイジかビヨンドか知らんけど、暴は東映やで」
冒頭、東映のお馴染み波濤のタイトルバックに、上のメッセージ(矜持?)を読み取りました。
○暴バディモノですが、あまりに無茶苦茶で面白かった。
ヤクザ役って俳優の中でも人気の職業なんやろな~となんとなく思いました。 pic.twitter.com/8BPoCVIJGa
#孤狼の血
— coco_movie (@coco_movie) October 9, 2020
昭和63年、広島のある市。正反対のベテランと新人エリート刑事が二大暴力団の抗争を追うが…。
ど頭の養豚場から全開で最後の最後まで凄かった。役所広司がもうッ…好き過ぎた😭松坂君にも度肝抜かされたし役者陣の気合いにマジで痺れた。モザイク無いのも良い。邦画オールマイベスト更新👏 pic.twitter.com/pwhZSL7HrD
#孤狼の血
— こじこじ (@kojikojio0318) August 22, 2020
腐り切った社会では正義や悪といった定義に意味はない。力ある者が絶対。ルールだの常識は足枷にしかならず腐ったこの世の中では手段を選ばず前に進み続けるしかない。誰にも理解されず唯一の支えは己の信念のみ。筋が通ってる男はやっぱり格好いい。#映画好きと繋がりたい pic.twitter.com/bbJOa1prx6
#07孤狼の血まとめ
女性作家の原作のせいか、男の格好良さが光る作品になっている。
真木よう子演じるママのクラブでお酒を酌み交わす役所広司と江口洋介のスマートさには任侠が苦手な私でもうっとりしてしまう美しさがある。
単純に格好いい男性を観るには、ややヘビーな面もあるが、観れば必ずこの男気と熱気の虜になるだろう。
松坂桃李目当てでもよし中村倫也目当てでもよし。
苦手意識に蓋をして一度観ていただきたい作品だ。