両親の愛に恵まれず育った住田祐一は、普通の大人になることを夢見る中学生。同級生の茶沢景子は彼に想いを寄せ、付きまとっていた。そんなある日、蒸発していた住田の父が突然帰宅。だが、その横暴さに怒りを爆発させた住田は、衝動的に父を殺してしまう。出典: U-NEXT
ライター/ジョセフ
解説/鯉西編集部
#01ヒミズフル動画無料視聴方法
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#02ヒミズ作品情報
「ヒミズ」は2011年にギャガ社によって製作されている、園子温監督によるサスペンスドラマになります。
第68回のヴェネチア国際映画祭でワールドプレミアム上映された後に、日本でも2012年の1月14日に劇場公開されました。
古谷実によって2001年から2003年にかけて漫画雑誌「ヤングマガジン」に発表されている、連載第4作を実写化したものです。
平穏無事に生きてきた自営業者が惨劇へと巻き込まれていく「冷たい熱帯魚」や、原発事故で揺れる小さな町の老夫婦の生きざまに迫る「希望の国」など。
世間を騒がせた事件の映像化から様々な社会問題やタブーに挑んでいる、園子温監督がメガホンを取っています。
単行本にして全4巻で発行されている長編コミックが、時代設定を3・11以後に移行した130分のオリジナルシナリオに纏め上げられました。
普通の未来を夢見ていた15歳の少年が辿っていく数奇な道のりと、彼を思い続ける少女との愛を描いたサスペンスドラマです。
作品データ
上映時間 | 129分 |
製作年 | 2011年 |
製作国 | 日本 |
原題 | - |
配給 | ギャガ |
公式サイト | - |
受賞歴
第36回 日本アカデミー賞 2013年 | |
ノミネート | 新人俳優賞 新人俳優賞 |
第68回 ベネチア国際映画祭 2011年 | |
受賞 | マルチェロ・マストロヤンニ賞 |
#03ヒミズ予告動画・あらすじ
予告動画
あらすじ
両親が幼い頃に離婚した住田祐一は15歳になったいま現在は母親とふたりで暮らしていて、家業のボート屋を手伝っていました。
母はギャンブルに全財産をつぎ込んだ挙げ句に、僅かな現金をテーブルに置いたまま恋人のてつと家を出ていってしまいます。
すっかり学校に来なくなってしまった住田を心配して、ちょくちょく様子を見にくるのはクラスメートの茶沢景子です。
先頃発生した震災によって故郷を追われてこの地へ流れついた、ホームレスの夜野正造も何かにつけて住田のことを心配しています。
周りの人たちのサポートを受けながら「普通の大人」になろうとしていた住田を、予想外の人物が訪ねてくるのでした。
#04ヒミズキャスト・スタッフ
#05ヒミズ見どころ
若さ溢れるふたりの熱演
普通に生きることを何よりも渇望しながらも、信じられないほどのドラマが待っている主人公・住田祐一役は染谷将太です。
住田への揺らぐことのない気持ちを隠すことのないぶっ飛んだヒロイン、茶沢景子の役を二階堂ふみが熱演していました。
猛烈な雨が降りしきる土手のてっぺんから制服姿のままで転がり落ちていくような、体当たりの演技を披露しています。
本作品での名演技が高く評価されて、マルチェロ・マストロヤンニ賞にふたり同時に輝いたのは今でも語り種です。
孫ほど年齢が離れている住田のことを「さん」付けする、夜野正造役の渡辺哲が若いふたりの脇をしっかりと固めていました。
園子温の代表作「愛のむきだし」で主演を務めた西島隆弘が、ストリートミュージシャン役でカメオ出演しているので見逃さないで下さい。
テル彦役の窪塚洋介やウェイター役の鈴木杏などの、園子温作品には初参加となるメンバーたちの顔触れも豪華ですよ。
畔にへばりつく人々
物語の舞台に設定されているのは茨城県豊浦市という架空の街で、いばらきフィルムコミッションの協力のもとで再現されています。
ゆったりと時間時間が流れていく湖の畔の土手と、世間から見捨てられたかのような貸しボート屋の佇まいが味わい深いです。
常総市内を流れる利根川水系の川、小貝川の河川敷周辺でセット撮影されていてロケーションとしてばっちりですね。
雑草が生い茂る土手の上の広々とした遊歩道は住田が日課にしているマラソンの定番コースで、劇中でも度々映し出されていきます。
遊歩道の先は千代田団地や宝町商店街などの常総市中心部へと通じていて、辛うじて世間との関わりを保っている住田を暗示しているようです。
散りばめられた詩編
随意に朗読される詩集からの引用が、個性豊かな登場キャラクターたちをより一層忘れ難いものへと変えていました。
映画冒頭で流れるのは15世紀フランスの詩人であり中世ヨーロッパを代表する、フランソワ・ヴィヨンの「軽口のバラード」です。
日本でもアルコール依存性の詩人・大谷を甲斐甲斐しく支える妻を描いた、太宰治の短編小説「ヴィヨンの妻」で馴染み深いのではないでしょうか。
大谷夫妻が住んでいる東京都小金井市の長屋には、本作品での住田一家のボート小屋を彷彿とさせるものがあります。
孤独を慰めるために茶沢が愛読していた1冊のヴィヨンの詩集が住田の手に渡ることによって、少しずつ縮まっていくふたりの距離感にも注目して下さい。
#06ヒミズ感想・評価
荒れ果てていく町と心
未曾有の大震災と津波によって壊滅状態へと追いこまれた街並みが、オープニングから映し出されていきます。
壊れた洗濯機の中から1丁のピストルを取り出して、自らの頭部に押し当てる主人公・住田祐一が挑発的です。
単なる住田の妄想なのか、それとも悲劇的なラストへと然り気無く繋がっていく伏線なのか思いを巡らせてしまいました。
直接的には地震の被害を受けていないはずのとある地方都市、豊浦にも訳ありな人たちが集まってきて住田に絡んできます。
向こう側へと行く瞬間
母はパチンコ通いが治らずに交際相手と出奔、父は思い出したかのように訪ねてきてお金をせびりにくる借金まみれ。
いい年をして根なし草のように生きる母親と自分勝手な父親によって翻弄されていく、15歳の少年の苦悩が伝わってきました。
ほんの気まぐれで学校に顔を出してみても、担任の先生は「夢を持て!」などと当たり障りのないアドバイスしかしません。
見るからに強欲で暴力的な借金取りの金子が意外なほど親切で、車で住田を自宅まで送り届けてあげる場面が心に残ります。
「腐るほど道があるのに自分で自分を追い込んでいる」という金子の予言通りに、取り返しの付かない選択肢を選んでしまうある日の夜が衝撃的です。
悪い奴を探す旅の終わり
嵐のような一夜が明けた後で、身体中にペイントを施して町中を徘徊し続けていく住田には鬼気迫るものがありました。
満席のファミリーレストランでアルバイト店員を困らせる客、バスの車内でシルバーシートを譲らなかっただけで激昂する若い男。
この世界で1番に悪い奴を探して、朝早くから真夜中までただひたすらにさ迷う住田の後ろ姿はまさに「歩け歩け地獄」です。
疲れ果てた住田を大騒ぎで迎えてくれた、茶沢や夜野を始めとするいつもの仲間たちには心温まるものがありました。
お金をかけずに手作りにこだわり抜いた細やかなパーティーと、ピンク色にリフォームされたプレハブ小屋にもつかの間の癒しがあります。
「後は自分でやって下さい」という意味深なセリフを残して旅立っていく夜野たちと、ただひとりその場に残った茶沢の全てお見通しな瞳が忘れ難いです。
みんなの感想・評価
「ヒミズ」
— へぷた (@hepta_CN) May 3, 2019
こんな映画に出会ったことがなかったのでいろんな意味で衝撃的でした。
自分が主人公たちの言う”普通”側の人間でいれてよかったと思う一方で、完全な普通側(作中でいう学校の先生や生徒)ではなくて、ぎりぎりの境界線にいるんじゃないかという疑念も浮かんでしまい、怖くもあります。 pic.twitter.com/Lxjy3OkG1T
ヒミズ
— NISHI THE WILD (@ryuugo0420) December 19, 2019
大好きな映画シリーズ。
2011年作品
この映画を面白くないと思える人はいないと思う。抑え続けた心、押さえ続けた握った手の温もり。全てが解放され叫び続ける描写に感動に涙。強すぎる、この映画!
有名漫画原作も大好き。感情剥き出しの物語を是非に。 pic.twitter.com/hrMoyikgi9
【みばら映画】
— じしま みばら Vtuber みばライブ100期生 (@BAR_MIBARA) August 13, 2020
『ヒミズ』震災後の日本が舞台の歪な家庭で育った中学生男女が織りなす狂気の青春物語… 光の一筋も差さない暗闇を一直線に落ち続けるような清々しいほどの陰鬱さに美しさすら感じました。どこまでも救いがないのに やや薄のラストはなぜか「よかったね…」と涙してしまう怪作です… pic.twitter.com/R6ywqjNfPB
#07ヒミズまとめ
白くぼんやりとした明け方の光が射し込んでくる一本道を、「住田、頑張れ!」と絶叫しながら走る茶沢の姿は涙なしには見ることが出来ません。
「この世にひとつの花」や「絆」といった上辺だけのエールにも、絶望の淵にいた住田を救いあげるような力が涌いてきました。
犯した罪を償うことを決意した住田のらための「頑張れ」が、いつの間にか被災地へと向けられていて感動的です。
まだ見ぬ世界への漠然とした期待と不安を抱えているであろう、中学3年生の皆さんにはお奨めな1本になっています。
まるっきり正反対のクライマックスには、原作マンガに思い入れがある愛読者からは賛否両論があるかもしれません。
いま現在では講談社から全3巻で刊行されている文庫バージョンの方が手に入りやすいので、是非とも見比べて下さい。